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対人恐怖(対人緊張、社交性不安障害)、適応障害

適応障害

心療内科では、職場や学校の人間関係によるストレスのために受診する方をよく見かけます。
自分が置かれた環境においてうまく適応することができず、さまざまな心身の症状があらわれて社会生活に支障をきたすものをさします。

だれでも新しい環境に慣れて社会適応するためには、多少なりとも苦労をしたり、いろいろな工夫が必要となるのですが、それがうまくいかなくなった場合になる病気の一つが適応障害というわけです。
仕事を休むなどストレス源から遠ざかることで良くなることが多いのですが、職場や学校を休めない人や、家庭内のストレスなどはなかなか避けることができないため長引く人も少なくないのが実情でしょう。

頻度

正確なデータはない。国民全体の適応障害の有病率は2~8%といわれている。
精神科受診患者の約10%という数字もある。
比較的若い女性に多くみられる。

症状

精神症状

抑うつ、不安、恐怖、あせり、イライラ、 学業や仕事などが続けられない(という不安や恐れ)

身体症状

動悸、発汗、不眠

行動の障害

(休職、不登校、別居、引きこもり、暴飲食など)

適応障害のタイプ

主な症状によって以下のように分類される。(DSMより)

  1. 不安気分を伴う適応障害
    不安、神経過敏、心配、いらいらなどの症状が優勢。
  2. 抑うつ気分を伴う適応障害
    抑うつ気分、涙もろさ、希望のなさなどの症状が優勢。
  3. 行為の障害を伴う適応障害
    問題行動、人の権利の障害、社会規範や規則に対する違反行為などが優勢。
  4. 情動と行潟の混合した障害を伴う適応障害
    情動面の症状(不安、抑うつ)と行為の障害の両方がみられるもの。
  5. 身体的愁訴を伴う適応障害
    疲労感、頭痛、腰痛、不眠などの身体症状が優勢。
  6. 引きこもりを伴う適応障害
    社会的ひきこもりが優勢。

対人恐怖(対人緊張、社交性不安障害)

対人恐怖とは

対人恐怖とは一口で言うと、他人の目に自分がどう映るのかが気になってしまう病気です。
自分の言動や表情、視線の向け方などのせいで人に変に思われたり、軽蔑されるのではないかといったことを過度に気すのです。

もっとも、あらゆる場面で緊張や恐怖を感じるわけではないのです。
代表的なものは「大勢の前でしゃべるときが困る」というものですが、受診する患者さんで意外と多いのが「親密」でもなく、「全くかかわりあいのない他人」でもない人間関係の場が困るという人たちです。

こうした場は中間状況と呼ばれ、たとえば自分の学校や会社の人、近所の人たちなど、さほど親しくない人と接する場面で生まれるのです。
ある患者さんは「変な話なんですけど、初対面の人とだったら平気なんです。
何回か会って少し親しくなった後の方が緊張するんです」と言いました。

この病気で受診するの十代半ばから二十代半ばの人が多い傾向があります。
ただ中年期になって会議などで発言する機会が増えたため、受診するという例もあります。

なお会食恐怖や視線恐怖、書字恐怖(場面書痙、恐怖型書痙)なども対人恐怖と同じような心理メカニズムがあるとされています。

対人恐怖の治療法…治るのか?

薬物療法としては抗不安薬やSSRI(抗うつ剤)、ベーターブロッカー(抗不整脈剤)などが使われます。
また行動療法や認知療法、森田療法、カウンセリング、精神分析などの精神療法も有効とされています。

では治るのでしょうか。
私は治療で改善はすると考えていますが、本人が満足するレベルまで良くなる例は多くないようです。
そうなる一番の理由は対人恐怖の大半の人は「人と緊張せずに喋れること」の他に、喋った結果「相手にどう思われるか」が気になるからです。

他人にどう思われるかを気にしている限り、なかなか自信が持てるようにはなりません。
ですから、まずは「自分の考えがちゃんと言えるようになる」など、相手の反応ではなく自分自身の対応法や考え方の修正にも取り組むことが望ましいでしょう。

あがり症を自分で治す方法

あがり症は、もともとは対人緊張や対人恐怖という病名だったのですが、最近は社会恐怖、社交恐怖、社交不安障害といった病名で呼ばれる傾向があります。
また薬物治療にも変化があります。
あがり症の治療薬は以前は抗不安薬が主体だったのですが、抗うつ剤であるSSRIが有効性が判明し今では広く使われています。

しかし、あがり症の治療には、昔も今も「実体験」が不可欠だと私は考えています。
人前でしゃべるのが苦手な人でも営業や店員として働くようになると「さほど気にならなくなった」と語る人が多いからです。
これは日々の実践練習のおかげといえそうです。
練習しないと上達しないのはスポーツだけに限りません。
まず苦手でも練習と割り切って機会を増やすことです。

もっとも、おそらくあがり症で悩んでいる人は、「そんなことは言われなくても分かっている。それができないから悩んでいるだ」と答えるでしょう。
その通りです。
あがり症の人は、人前でちゃんと喋りたいという意欲に関してはむしろ他の人よりも強いくらいなのです。
うまく喋ろうとする気持ちが強すぎて自意識過剰になり、かえってあがってしまうのでしょう。
そこで初めのうちは、あがることが予想される場面に出向く約一時間前に抗不安薬を使うのがいいでしょう。
不安な気持ちや緊張感がかなり軽減します。

また練習場所のようなものを希望するなら、いくつかお勧めできる所があります。
一つは話し方教室です。
参加者が交代でみんなの前で喋る実習が主体なので、練習場所としてはもってこいです。
おまけに話し方教室では、話し方の他に「人前に立ったときはどんな姿勢がいいのか」とか「話をしているとき、自分の目線はどこに向けたらいのか」「どこに自分の手を置といいか」なども具体的に教えてもらえます。

実は私も以前、参加したことがあります。
30名ほどの参加者はみんな話し下手で、人前に立つだけでもうろたえる人もいたのですが、三日間の講習でほぼ全員が堂々と話せるようになったのが印象的でした。

もう一つは自助グループの利用です。たとえば全国に支部がある森田療法の「生活の発見会」などは練習の場としてもお勧めです。

当クリニックで診ることが多い病気

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以下のような精神科の病気は専門外のため扱いません。
統合失調症、躁うつ病、アルコール依存症、てんかん、発達障害など

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