摂食障害(過食症、拒食症)|埼玉県さいたま市大宮区 心療内科|心と体のクリニック


摂食障害(過食症、拒食症)

なぜ、過食症になるのか ─過食症のメカニズム─

過食症になる理由としてさまざまな見解(学説)があり、まだ統一されたものはないのが実情ですが、そうした見解の他に、私は過食症になりやすい性格傾向というものがあると考えています。
まず、過食症の人は自分の生き方に自信がなく、「他人にどう思われるか」で判断するいわゆる「自分がない」人が多いです。このため、自分らしい生き方ができないだけでなく、他人に嫌われたくないという気持ちから我慢や無理をしやすいようです。
その一方で、過食症になる人はもともと我慢が苦手なうえ、我慢するとストレスが溜まりやすいため、ストレス発散行為としての過食に走りやすくなります。 我慢が苦手というのは自分の衝動をコントロールしにくい(衝動統制に問題がある)ともいえます。
これに加え、過食症には嗜癖(依存症)としての側面もあります。このことをもう少し説明します。

1.「自分がない」と過剰適応

過食症のM子さん(22歳)は「私は自分というものがないんです。小さいころから、お母さんに嫌われないようにと、それだけを考えてやってきたんです。ですから、やりたいことも見つからないんです」と語ってくれました。「自分がない」問題で悩む人は最近では珍しくないのですが、過食症の人はそれが中心テーマになっているように思われます。自分がないために「他人にどう思われるか」を基準に自分の価値判断や行動を取りがちになるのでしょう。
この人たちは、皆に嫌われたくないという思いが強いので職場や学校での評価はむしろ高いことも多いようです。しかし、自己評価が低く、周囲の評価を過剰に気にしたり、自分の些細な失敗をいつまでも後悔しがちです。そしてこのストレスを少しでも紛らわせるために過食に走ることになるのでしょう。
また過食や嘔吐自体も「自分がない」ことに由来している可能性があります。「お腹がはって息もできないほど食べて、吐く」行為は結果的には自分が生身の体を持っていると実感することになります。もしかしたら彼女達は、過食することによってはじめて「自分がある」ことが確認できるのかもしれません。

2.衝動統制の障害

概して過食症の人は長期計画に基づいて行動するのは苦手です。たとえば、学校の勉強でも一気にやるのは得意ですが、少しずつコンスタントにやるのは苦手のようです。ダイエットも一気にやろうとするので、無理な計画となりやすく、結局は空腹に耐えきれず、一気に食べることになります。
このように、自分をコントロールするのが苦手なことから、過食症を衝動統制の障害(行動異常)とみる研究者も少なくないようです。
過食症の人は過食だけではなく、他の行動異常もあります。家庭内での暴言や暴力、また自殺企図やリストカット、さらには万引きも珍しくありません。

3.依存症としての側面

そしてもう一つ、過食症には依存症(嗜癖、くせ)という要素もあります。そのメカニズムはアルコールなどの他の依存症とも似ていて、最初はストレス発散行為として過食が始まったとしても、過食という行為自体がくせになってしまい、それから抜けられないのです。依存症全般にいえることですが、依存行為に走ることにはそれなりのメリットがあります。まず、依存行為はそれ自体が快感であり、ストレス発散になります。また依存行為をしている間は自分が抱えている問題から背を向けていられるという利点もあります。このためますます止められなくなるのでしょう。
過食症の人はアルコール依存症にもなりやすいとれさていますが、過食症を依存症の一つと考えれば、類似の行為に移行しただけと理解できます。
また下剤や利尿剤を乱用する人も少なくありません。体重をコントロールするためや「お腹にあるものをすっきりさせたい」、「むくみを取りたい」などが動機です。
これもくせとなり、下剤や利尿剤を大量に常用する習慣がいったんできると、止めることは非常に難しくなります。

以上、過食のメカニズムとして「自分がない」、衝動統制、依存症の三つをあげましたがそれは別々のものではありません。たとえば、「自分がない」としっかりした自分なりの生き方や価値観が見いだないので、コントロールする意義や基準を自分に設定しにくくなります。このため衝動統制にも問題が生じやすくなります。また、自分がなく、衝動統制に問題があるため依存症となりやすいと思われます。

 


過食症(神経性過食症)

診断

神経性過食症の診断基準(概要、DSM-5)
A.むちゃ食いのエピソードの繰り返し。むちゃ食いのエピソードは以下の2つによって特徴づけられる。
(1) 他とはっきり区別される時間の間に、ほとんどの人が同じような時間に同じような環境で食べる量よりも明らかに多い食べ物を食べること。
(2) そのエピソードの間は食べることを抑制できないという感覚になる。
B.体重の増加を防ぐために不適切な代償行動、例えば自己誘発性嘔吐、下剤、利尿剤、その他の医薬品の誤った使用、絶食や過剰な運動。
C.むちゃ食いおよび不適切な代償行為はともに、平均して3カ月間にわたって週1回以上起こっている。
D.自己評価は、体型および体重の影響を過剰に受けている。
E.その障害は、神経性食欲不振症のエピソードの期間中にのみ起こるものではない。

特徴

過食の仕方には特徴があります。「だらだら食い」やテレビを見ながらといった「ながら食い」と違い、一気に大量に食べて吐きそうになるまで止められないことが大半です。また過食の後での自己誘発性嘔吐(自分で吐く)や、下剤の乱用、絶食や食事制限がみられます。
過食をすることで決心したダイエットに失敗したという自己不全感や、体重をコントロールできないという不安感や罪悪感が特徴的です。
なお、(過食を伴わない)拒食症よりも自傷行為、自殺企図、アルコールや薬物乱用などの自己破壊的行為や万引き、性的逸脱などの衝動行為を伴う例が多いようです。

治療

現時点では標準的な治療法は確立されていません。
ただし、過食症の原因には心(心理的)の要素と体(生物学的)の要素の両方があります。このため過食衝動や、抑うつや不安、衝動コントールに少しでも有効とされる薬物療法は試す価値があります。また過食症の人は、過食以外の悩みや不安を抱えている場合が少なくないのでカウンセリングなど心理的アプローチも大切です。私は、過食がある程度落ち着いた時期に、(過食以外の)自分の悩みを語り始めることが多い印象を持っています。
なお、過食症の患者さんは、他の病気の患者さんに比べて「結果を急ぐ」傾向があります。もちろん、過食症の患者さんのホンネは「過食を早く止めてほしい」ことなので、当然なのかもしれませんが、そう簡単には改善しないのです。
このため数回の通院で効果がないと、治療を中断してしまう患者さんが多いのが実情ですが、過食症の治療こそ、じっくり腰をすえてほしいというのが私の希望です。

拒食症から過食症への移行は多い

拒食と過食というと、現象としてはちょうど反対ですが、一つの病気が見せる二つの顔、という面があります。
それというのも拒食症といっても何年もダイエットを続ける例(制限型、不食型)は少数派です。大半はダイエットに失敗し、やがて過食するようになります。このため過食症といっても以下のようなタイプに分かれます。
1)拒食症+過食症タイプ
(不食型の)拒食症が途中から過食するようになるが、嘔吐や下剤乱用により、低体重を維持する
2)拒食症から過食症への移行するタイプ
過食のために体重が増えて拒食症ではなくなる
3)ダイエットが不十分なタイプ
ダイエットを始めるも拒食症になるほど体重が減らないまま過食症になる
4)(純粋な?)過食症タイプ
ダイエットをすることなく過食症になる

 


拒食症(神経性食欲不振症)

診断

診断規準はいくつかあり、それぞれ微妙に違います。以下はその一つです
神経性食欲不振症(拒食症)の診断基準(概要、 厚生省特定疾患・神経性食欲不振症調査研究班)
①標準体重のマイナス20% のやせ(標準体重は160 cmなら54kg、155cm なら52kg)
②食行動の異常( 不食、大食、隠れ食い、など)
③体重や体型について歪んだ認識( 体重増加に対する極端な恐怖など)
④発症年齢:30歳以下
⑤( 女性ならば) 無月経
⑥やせの原因と考えられる器質的疾患がない

特徴

痩せているのに、肥満への強い恐怖を抱きます。このため太股やお腹など体形にこだわる傾向があります。
海草物や野菜といった栄養のない食物を選んで食べるなど、食事のメニューや取り方にもこだわります。
また部屋の掃除やジョギングなどを必要以上に行う、過活動も見られます。
  こうしたこだわりは体重低下と伴にひどくなる傾向があります。

治療

拒食症に直接効く薬はありません。
低体重は生命にかかわるため、まずは体重を増やす必要があります。しかし本人として、体重を増やすことは嫌悪そのものであり、不安や恐怖を伴うことなので、ここが拒食症の治療で一番難しいところです。
このため家族、とくに母親の協力は不可欠です。ただし家族が過剰に介入するのも逆効果になるので、家族は本人の気持を尊重しながら「指導、教育ではなく、あくまで協力する」というスタンスを保つことが望ましいでしょう。
食事に関しては、できるだけ不安や恐怖が募らないように、少量から徐々に増やすとか、多少偏食になることに目をつぶったメニューなどの工夫が必要でしょう。
著しい低体重の場合は入院治療を勧めます。目安となる体重は35kg(身長158㎝前後の場合)です。私の経験では、35kg以下になると、自力で体重を回復せさせるのが難しい場合が多いからです。ただし入院となると学校や仕事を休む必要があるうえ、入院先の都合などの理由のため、外来治療になることも多いのが現状です。


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