過敏性腸症候群、呑気症|埼玉県さいたま市大宮区 心療内科|心と体のクリニック


過敏性腸症候群、呑気症

過敏性腸症候群

当クリニック受診患者の傾向

過敏性腸症候群(IBS)は症状別の分類では、多い順に便秘型、下痢型、便秘下痢交代型、ガス型とされています。ところが当クニリックを受診される患者さんの数はちょうど逆で、多い順にガス型、便秘下痢交代型、下痢型、便秘型という順になります。これについて説明します。
まず便秘型ですが、大半の人は病院やクリニックには行かず下剤や健康食品を買うなどで対処可能なようです。このためか当クニリックを受診される患者さんは、大量の下剤を使っても効果ない人や腹痛が強い人など、特殊な人に限定されます。
次に下痢型の人は内科や消化器科で、下痢止めや整腸剤をもらうことで対処しているようです。また最近はイリボーなど過敏性腸症候群の下痢型に効果的な薬が発売されたこともあり、下痢だけに困って当クリニックを受診をする人は少数派です。このタイプで当クリニックを受診するのは、会社や学校に行くときに下痢や腹痛がひどくなるなど、ストレスや性格要因が関係している人が大半です。
では便秘下痢交代型はどうでしょうか。これについても便秘でも下痢でも効果があるとされるコロネル(ポリフル)が発売されてからは薬で改善することも多くなりました。このため当科を受診するのはストレスや性格要因が関係している人や、コロネルでは改善しない人たちです。
最後にガス型です。内科や消化器科ではガス(おなら)に対してガスコンという薬が使われることが多いようです。ガスは腸内ではシャボン玉のような泡状になっていますが、この泡の表面張力を低下させる作用があるとされています。このようにガスコンを服用すると理屈上は、お腹にたまったガスが減るはずですが、実際にはうまく行かないことも多いようです。
なにしろ過敏性腸症候群の治りやすさの順番は便秘型、下痢型、便秘下痢交代型、ガス型といわれています。つまりガス型の治療が一番難しいということになります。
このため内科や消化器科で改善しなかったという理由で当クニリックを受診する人が多くなる傾向があります。

 


呑気症(空気嚥下症)

空気を飲み込んでしまい、げっぷや腹部膨満感が生じる状態で女性に多いようです。
なおこれは機能性ディスペプシアの一部に分類されることもあります。
当クリニックを受診する患者さんの大半は「お腹が張る」ことに困って受診するようです。
原因としては精神的なストレスが主とされています。ただし本人がストレスがあるとは自覚していないこともよくあるのですが、そんな人も毎日の生活のなかで「がまんする」など(嫌なことを)飲み込む傾向があると認めることが多い印象があります。

腹部膨満の症状は
1.朝起きたときには症状がなく、夕方に向って徐々に悪化する。
2.排便やおならでは改善しない。
3.仕事がない日などストレス要因が少ないと軽くなる。
という傾向があります。

この他に、早食いなどとも関係し、食事の際に食物と一緒に空気を飲み込むために、症状が出る場合もあるようです。
治療としては、ストレスや緊張、不安などの原因となりそうな要因を考え、可能な限り減らすことが優先されます、抗不安薬や抗うつ剤などが有効なこともあります。
なお噛みしめ呑気症候群というほぼ呑気症と同一の病態があります。これは無意識のうちに奥歯を噛みしめ、空気を含む唾液を飲み込んでしまい、お腹に空気がたまるため腹部膨満などの症状が現れるというものです。
ただし噛みしめ呑気症候群という視点からアプローチする口腔外科や歯科の先生たちも、スプリント(マウスピースの一種)療法などの他に心療内科的な治療が必要なことは認めています。


区別が難しい「ガス型」と「自臭症」

私のクリニックに「ガス(おなら)が困る」と受診される患者さんが少なくありません。ここで問題なるのは本当にガスが出ているかどうかです。もし本当に出ているようなら過敏性腸症候群のガス型、本人が出ていると考えているだけなら自臭症(自己臭症)、の可能性が高くなりますし、当然治療法も違ってきます。
ただし実際にはこの区別は簡単ではなく、また両方ある場合も少なくないのです。たとえば実際にガスが出ると、普通は「今出た」と本人には分かります。ですから「おならが出る瞬間が分からない」というのは実際には出ていない、つまり自臭症ではないだろうか、と推測します。ところが、学校や会社の密室などにいると「おならが出るのではないか」という不安や緊張のため、おならが出た瞬間が分からないということが実際にあるのです。
さらに自臭症といっても、お腹が張りやすかったり、腹痛、下痢、便秘といった過敏性腸症候群の症状も併せて持っている人もいます。実際、私も属す日本心身医学会の雑誌「心身医学 vol 55,2015」に小林伸行先生が「おならを主訴にした自臭症の53%が過敏性腸症候群だった(p1380)」という報告を載せています。
私はむしろおならに悩む人はこの二つの病気を併せて持ちやすいのだと考えています。たとえばガス型の人は臭い自体は微弱でも、それを気にするあまり「いつも臭っているのではないか」という心配が頭から離れず、自臭症に近い状態になります。
また自臭症の人は、もともと「自分は嫌われているのではないか」という気持になりやすい傾向があります。このため嫌われる原因探しをする傾向も併せ持つようになり、その結果、お腹のぐるぐる音や張り感、ガスなどを気にするようになる。さらに気にすることが腸の状態にも影響するといった悪循環が生まれやすくなる、といったメカニズムが生じやすくなるからです。

 


臭いセンサー(おなら検出器)について

過敏性腸症候群ガス型や自臭症など、ガス(おなら)などで困っている患者さんの中には、実際は臭っていないのに、臭っているのではないかと心配して、人が多い所に出向くことに消極的になっているケースをよく見かけます。
 そんな人のために役立つのではないかと考え、いくつかの業者に「携帯型のおなら検出装置を紹介してほしい」と連絡してみました。その中には「この装置がお勧めです」と具体的に紹介してくれた所もあったのですが、臭いセンサーに詳しい方の話などから、私なりに「現時点では実用的なものはない」という判断をしました。
 その一番の理由は「臭いセンサーの能力は、人間の鼻より劣る」という点です。臭いを感じてもセンサーが反応しなかったり、またセンサーが反応してもおなら以外の臭いを検出するなどの誤作動のため、かえって不安になったり過度な心配をしてしまう可能性が大きいからです。
 念のために付け加えると、おならを検出することは一応可能なようです。だだ正確な判定のためには「無臭の部屋で下着を着ない状態で行う必要がある」ようで、当クリニックでこうした条件での検査を行うことは物理的に無理です。
 私は当初、携帯用の臭いセンサーを購入して、患者さんに貸し出すことを想定していました。このため一部の患者さんには「近い内に入手予定です」とまで伝えたのですが、以上のような理由で当分、臭いセンサーの導入は見合わせることにしました。申し訳ありません。

 


過敏性腸症候群に抗生物質── ガス型にも有効?

抗生物質は、肺炎など細菌感染症に対して使われます。抗生物質は細菌を死滅させる働きがあるのですが、私たちの腸内に元々住みついている腸内細菌も殺してしまい、結果として腸内細菌のバランスを崩し、便秘や下痢、ガスなどになる可能性があります。したがって一般的には抗生物質は健康な腸の維持のためには、好ましくない薬といえます。
 ところが、この方法はあえて抗生物質を使おう試みです。それというのも、過敏性腸症候群の患者さんで、小腸で異常な細菌増殖が見られるケースがあり、その患者さんに対して(日本では未発売の)抗生物質を飲ませたら、過敏性腸症候群が改善した、という研究報告があり、注目されているのです。
 もともと小腸には細菌はあまりいません。その理由は、食べ物などに付着して口から入った細菌は、胃を通過する際に、胃酸の殺菌作用で大半は死んでしまいます。さらに小腸には、細菌の侵入を許さない免疫細胞が集まっているからです。
 小腸で細菌が増殖すると、栄養の吸収が悪くなりメタンガスなどが発生しやすいうえ、腹痛や便通異常といった症状が出やすくなる可能性があります。このため小腸の細菌を殺して症状を改善させるという発想は一応理にかなっています。
 以下私なりの感想です。まだこの治療法を当クリニックで始めたいとは考えていません。その理由はまず、小腸に腸内細菌の異常増殖を判定する簡便な検査が未だないからです。たとえば先程「小腸で異常な細菌増殖が見られるケース」の例を挙げましたが、これは「ラクツロース呼気テスト」と呼ばれる検査法での判定ですが、この方法はまだ信頼できる検査とはいえないのが実情です。
また抗生物質は小腸の腸内細菌だけを殺すわけではなく、大腸の腸内細菌も殺してしまう可能性が高いうえ、まだ国内で使用可能な抗生物質で治療した例も少ないからです。
 当分は、細菌感染がきっかけで過敏性腸症候群になった例などに限定して行う治療法だと、現時点では考えています。ただ過敏性腸症候群のガス型の一部の人には有効な可能性はありそうです。

 


 

過敏性腸症候群に「便移植」療法──腸内細菌の組成を変える

便移植(糞便微生物移植)は他人の便を移植する方法です。慢性的でなかなか良くならない腸の病気の多くは悪玉菌と呼ばれる腸内細菌が関係するようです。そこで一気に腸内細菌のバランスを置き換えてしまう方法として、健康な人の便(腸内細菌叢)をそのまま移植するという方法が考え出されました。
 便移植は偽膜性大腸炎(抗生物質により、特定の菌だけが異常繁殖する病気)や潰瘍性大腸炎、腸管型ベーチェット病などに対して、欧米では9割を超える有効性が示されたという報告もあます。
さらにこれに関連して、腸内に便を直接入れる代わりに、健康な人の腸内細菌叢をカプセルにつめて、経口で服用するという試みもあり、今後これらの病気に対しては有力な治療法の一つになる可能性があります。
 では過敏性腸症候群についてはどうでしょうか。実際にやってみたという報告もあります。たとえば過敏性腸症候群13例(下痢型9例,便秘型3例,混合型1例)に対して便移植を行ったところ,平均11カ月後において70%が腹痛や排便習慣,消化不良,腹部膨満感などの症状が改善したしたようです(Pinnら,2013)。
 ただし、まだ始まったばかりなので、過敏性腸症候群の治療としてすぐ広まるとはいえないようです。現時点では便移植は二親等以内の親族の便から、といった制約がある上、費用も数十万~百数十万するといった問題もあります。またカプセルによる内服治療試みはまだ研究段階だからです。
 さらに、もう一つ別の懸念材料があります。腸内細菌の大まかな組成は5歳ぐらいで決まってしまい、その後は大きな変化がありません。つまり腸内細菌の組成には個性のようなものがあって一人一人違うのです。
 「乳製品などで腸内細菌を変えよう」などの宣伝広告はありますが、それはごく僅かの変化を狙うことによって改善を期待する試みです。便移植は一気に大幅な腸内細菌の組成が変えることが狙いですが、そんなことことが果たして、長い目でみてその人の健康に良いことなのなのか、私には判断材料がありません。
 したがって、便移植の是非は少し大規模で長期的て調査研究の結果を見てから、というのが私の今の気持です。

 


過敏性腸症候群、なかなか良くならない人のために──その1 ポイントは3つ

当クリニックに通院治療を続けているのに一向に良くならない人がいます。ちゃんと統計を取ったわけではありませんが、通常は便秘型や下痢型、交代型による症状、つまり便秘や下痢、腹痛、腹部違和感などは早い人で数日、遅い人でも一カ月程度で改善します。その一方で二カ月以上たっても改善しない人もいます。割合でいうと20人に1 人(5%)ぐらいでしょうか。
ただしガス型の改善にはもっと時間がかかります。私としては半年を一つの治療期間のメドにしていますが、それでも改善しない人が、20人中3~4人(15~20%)はいます。
なかなか良くならない理由としては、主には私の力不足があります。患者さんは良くなると思って通院しているのてすから、申し訳ないと思います。過敏性腸症候群はあくまで症候群(原因が一つではない)ので、もっと違った角度からの検討が必要なのでしょうが、それが不十分なのだと思います。
 ただその場合でも、患者さん自身が毎日の生活を工夫することで改善が期待できます。
そのポイントは三つ。それはストレス、睡眠を含めた生活リズム、そして食生活です。
他の心療内科患者さんにもいえますが、過敏性腸症候群の人は、真面目でガマン強い人が多い印象があります。要するにストレスを溜めやすく、ストレス発散に繋がることをあまりしない人です。ストレス発散法の詳細は他で述べたので省略しますが、僅かな時間でよいので、何かしらのささやかな「心と体をゆるめる」ことを実践して頂きたい。
次に生活リズムです。人間にはほぼ24時間の日内リズムというものがあります。これを無視した生活は健康にはマイナスです。つまり毎日、同じような生活が一番望ましいのです。これは仕事や食事だけでなく睡眠にもいえます。毎日、寝つく時間が違うとか、睡眠時間が違うという生活はできるだけ避けましょう。

 


過敏性腸症候群、なかなか良くならない人のために──その2 食物繊維を摂ろう

過敏性腸症候群で大事なのは食生活です。実は、私自身もこれまで、食事の重要性を知りませんでした。しかし腸内細菌を調べるにつれ、これは過敏性腸症候群の治療にとっても重要だと思うように至りました。
 私たちの腸には約100兆個の腸内細菌が棲みついていますが、その割合は善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割が理想とされています。
肉ばかり食べる生活が続くと悪玉菌が増えます。悪玉菌は便秘や下痢になりやすいうえ、おならが臭くなります。一方、善玉菌が増えると、黄色いバナナ状の快適な便が出るようになり、またおならも臭くないのです。
 では善玉菌を増やすにはどうしたら良いでしょうか。一般的にはヨーグルトなど乳酸菌入りの食品を摂ることを勧める人が多いようです。こんな話をすると、今度はどんな乳酸菌の食品が良いかという議論になるでしょう。
 乳酸菌入りの食品を摂ることの意義は、免疫が活性化され、腸内フローラ(腸内細菌の組成)にも好影響を与える、ということのようです。したがって「どんな食品を摂ったらいいか」という議論は要するに「どうやったら免疫活性が起こりやすいか」という話になります。
 その答えは「菌の数」のようです。つまり生きた乳酸菌でなくても、ビフィズス菌でなくても構わないようなのです。それというのも免疫活性は菌体成分に反応するので、菌が死んでいても構わないのです。
 ここまで話すと「そうか乳酸菌をたくさん摂ればいいのだな」という結論になりそうですが、私の主張はちょっと違うのです。というのも経口で摂取した乳酸菌は「たとえ生きた乳酸菌であっても、そのまま自分の腸内細菌にはならない」からです。つまり乳酸菌入りの食品は、毎日摂取する必要があり、あくまで一時的な助っ人(ヘルプ)にしかならないのです。
 また乳酸菌入りの食品は、個人によって効果も違います。さらには逆に下痢などの原因になる人もいます。したがって一時的なヘルプとしては有用だとしても、できれば自分の腸内細菌が育つような方法が良いでしょう。
 それには「腸内細菌のエサとなる食品を積極的に摂ること」です。それは繊維質の豊富な食物です。繊維質は腸内で分解され、腸内細菌、とくに善玉菌のエサに向いているのです。具体的には野菜、穀物、豆類、海草などです。要するに昔の日本人に近い食べ物ということになりそうです。ぜひ少しでも、毎日の食事にこれらを取り入れてみてください。
注) 最近、悪玉菌の中にも人に役立つものが見つかり、善玉菌、悪玉菌という表現は今後使われなくなる可能性があります

 


       
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